みちすがら

寄り道、近道、回り道

「天気の子」スペシャル予報は、なぜあんなにも泣けるのか。

「ありがとう。ありがとう。ごめんね。ありがとう。さよなら。」
人が純粋に誰かを想うということの美しさと、その結末にある幸せと、同じくらいの悲しみや苦しみ。
無防備なほどにさらけ出される登場人物の心。心と心がぶつかり合うその場に引きずり込まれて、いつのまにか自分の心もむき出しになる。
その時に浮かんでくるのは、混じり気のない純粋な時間。
「まるでこの世界に自分だけしかいないような」そんな心。
その心の美しさを思い出すと同時に、その心がすでに過去のものになってしまっていることの切なさが押し寄せてくる。
感動と喪失感の合間で揺れる心に、最後の言葉が響く。
「約束の場所をなくしたまま、それでも僕たちは生き始める。」
僕たちはきっと、この不完全ないびつな心のまま生きていかなければいけない。そして、その歪さはきっと、ダヴィンチの未完成の絵画のような美しさを持っているのだと思う。