みちすがら

寄り道、近道、回り道

井の頭線の風景

電車の中、座席に座って一生懸命にノートに向かって勉強する男の子

何かのメモを見つめ、考え事をする男性

遠ざかる駅のホームで、スケートボードを片手に退屈そうに電車を待つ男の人

 

窓の外、青くて、赤くて、すこしだけ黄色い空

弱くて、だけど優しい光に照らされた街並み

駅のホームに差し掛かるときに暗くなる窓の外

 

電車とホームの間の隙間

出発のアナウンスと音を立てて閉まるドア

止まっていた電車が動き出す時の高い音

まるで鏡に映った自分を見ているような反対側のホームに立つ人たち

楽しそうに話す恋人たち

特急列車の通過する音と風

気が付けば自分の後ろに並んでいるたくさんの人びと

 

三角のつり革

疲れ果てて座りながら口を開けて眠る人

大きなあくび

お父さんに寄りかかりながら安心した表情で眠る男の子

小さな釣竿を両手で大事そうに守りながら、そっと目を閉じる父親

時折目を開けて子どもを見つめる父親

さっき別れた友達はもう家についただろうか

 

窓の外を流れる、似たような風景

似たような家、似たような建物

似たような服を来た人たち

似ているけど、やっぱりどこか違う人たち

 

だんだんと暗くなる空

さっきまで青くて、赤くて、黄色かった空

青でも、赤でも、黄色でもない空

この空は何色なんだろう

世界から色を奪う空、暗くて白い世界

 

目を覚ました男性

さっきまで眠っていたことが嘘のように、緊張した表情の男性

窓に映る自分の姿

電車の中の風景に染み込む自分の姿

目的地を告げるアナウンス

降りるドアに少し迷って、それから電車を降りた